MetaのAI研究部門FAIRは、米ジョージア工科大学およびCuspAIと共同で、空気中からCO2を直接回収するための先進材料探索を支えるオープンデータセット「Open Direct Air Capture 2025」を発表した。CO2吸着材などの候補を迅速かつ高精度にスクリーニングできることを目指し、気候テックと材料科学の研究・産業応用を加速する狙いだ。
発表の概要
「Open Direct Air Capture 2025」は、空気からCO2を捕捉する先進材料の発見を支援するために公開された、現時点で最大級のオープンデータセットと位置づけられている。Meta FAIR、ジョージア工科大学、CuspAIが共同開発し、材料候補のスクリーニングを高速かつ正確に行えるよう設計されている。
データセットの狙いと特徴
本データセットは、CO2直接回収(DAC)に資する材料設計・探索を民主化し、学術・産業の双方で再現性の高い比較や評価を可能にすることを目指す。オープン化により、研究者やスタートアップが共通の土台でモデル開発・検証を行い、知見を共有しやすくなることが期待される。
共同開発の顔ぶれ
本プロジェクトは、AI研究(Meta FAIR)、材料科学のアカデミア(ジョージア工科大学)、クライメートテックに焦点を当てる企業(CuspAI)が連携。分野横断の知見を結集することで、データの品質と有用性の両立を図っている。
何ができるのか:迅速・高精度なスクリーニング
スクリーニングとは、膨大な材料候補から有望株をふるいにかける工程だ。機械学習や物性予測モデルと組み合わせることで、実験の手戻りを減らし、開発コストと時間を大幅に圧縮できる可能性がある。最終的な実証は依然として不可欠だが、探索の初期段階を効率化する効果が見込まれる。
産業・研究現場へのインパクト
CO2回収コストの低減や、エネルギー効率・耐久性に優れた吸着材の発見は、DACの社会実装に直結する。素材開発の速度が上がれば、パイロットから商用規模への移行を後押しし、排出削減ポートフォリオの選択肢を広げる効果が期待される。
活用のポイント(読者向け)
本データセットは、研究・事業開発の出発点として有用だ。自組織の課題と照らし合わせ、モデルやワークフローにどう組み込むかを検討したい。
- 材料研究者・学生:基盤データでベンチマークを整備し、モデル比較を標準化
- スタートアップ:探索候補の短期選定や概念実証の迅速化に活用
- 企業R&D:既存パイプラインに組み込み、試験計画の優先順位付けに反映
- 政策・投資サイド:DAC技術の進展速度や課題の把握に役立つ補助情報として参照
背景:Direct Air Capture(DAC)とは
DACは大気中の低濃度CO2を直接回収する技術で、排出削減だけでは届かないネットゼロ達成に向けた補完策として注目されている。鍵となるのが、低エネルギーで高選択的にCO2を捕捉・放出できる材料の発見と量産適合性だ。データ駆動の材料探索は、こうした課題解決に向けた有力アプローチである。
今後の展望
オープンデータの公開により、コミュニティ主導の改良やベンチマークの拡充が進むだろう。利用条件やアクセス方法、今後のアップデート計画は公式アナウンスを確認しつつ、実験データや実機検証との往復でモデルの外挙動を見極めることが重要になる。オープンエコシステムが醸成されれば、DAC素材の発見から実装までのタイムライン短縮が一段と現実味を帯びる。





