次世代AI「GPT-5」が、試験管内でタンパク質を作る「セルフリータンパク質合成(CFPS)」の条件探索で、これまで人間が試したことのない低コストな反応組成を自動的に見つけたことが分かりました。膨大な組み合わせから、現実の自動化プロセスに耐える“使える条件”を効率的に発見できることが示され、創薬や合成生物学の研究プロセスを大きく変える可能性があります。
AIが拓くセルフリータンパク質合成の新境地
セルフリータンパク質合成(CFPS)とは何か
セルフリータンパク質合成(Cell-Free Protein Synthesis:CFPS)は、生きた細胞を用いず、細胞から抽出した酵素や分子部品だけを使って試験管内でタンパク質を作る技術です。長年研究が続けられてきましたが、反応液に含める成分や濃度の組み合わせは膨大で、すべてを試すことは困難でした。
「組み合わせ爆発」が研究のボトルネックに
CFPSでは、エネルギー源、アミノ酸、塩類、補因子など、多数の要素を様々な濃度で組み合わせる必要があります。この「組み合わせの宇宙」は極めて広く、手作業で条件を少しずつ変えながら試す従来の方法では、良好な条件を見落とすリスクが常につきまとっていました。
GPT-5が見つけた「低コストで実用的」な条件
研究チームによると、GPT-5は膨大な条件候補の中から、従来の研究では試されてこなかった反応組成を提案し、その中に低コストでありながら実際の実験で安定して機能する配合が含まれていたといいます。人間研究者が経験的に選びがちな“お決まりの条件”から離れた、新しいレシピがAIによって掘り起こされた形です。
高スループット自動化とGPT-5の役割
高速に「提案して試す」ループを回す仕組み
今回の成果の背景には、高スループットな自動化システムがあります。GPT-5が多数の反応条件を提案し、それをロボットが一括で実行・評価することで、「提案→実験→結果フィードバック」のサイクルを人間の手作業よりはるかに高速に回すことができます。これにより、数千にもおよぶ組み合わせを短時間で検証できるようになりました。
「現実のラボ条件」で機能する組み合わせを特定
重要なのは、GPT-5が単に理論上良さそうな条件を出すだけでなく、「高スループット自動化」という実際の運用現場でも安定して扱える条件を見つけ出した点です。研究チームは、実験ロボットで大量に繰り返し実行しても性能が維持される組み合わせを特定できたとしており、産業用途を見据えたスケーラビリティの面でも手応えを得ています。
人間だけの試行では見逃される「使える」領域
研究チームは、「人間が手作業で絞り込みながら条件探索を行う従来のワークフローでは見落とされていた『実用的な条件の島』を、GPT-5と自動化実験の組み合わせにより効率的に見つけることができた」と説明しています。大量の組み合わせを体系的に試せることで、これまで到達しにくかった条件空間の領域を探索可能にした格好です。
研究・産業へのインパクトと今後の展望
創薬・合成生物学での応用可能性
CFPSは、医薬品候補タンパク質のスクリーニングや、酵素の機能評価、人工遺伝子回路の検証など、幅広い用途を持ちます。GPT-5のようなAIが条件探索を支援することで、試験のコストと時間を大幅に削減し、より多くの候補分子を短期間で評価できるようになると期待されます。
研究者の役割は「問いを立てること」へシフト
一方で、条件の提案や実行の多くをAIとロボットが担うようになることで、研究者は「何を最適化したいのか」「どのような制約条件の下で評価すべきか」といった、戦略設計や結果解釈により多くの時間を割けるようになります。単純な試行回数を増やすのではなく、より本質的な研究課題の設定が重要になる段階に入りつつあると言えるでしょう。
まとめ
GPT-5は、セルフリータンパク質合成という既に成熟しつつある分野においても、未踏の条件領域から低コストで実用的な反応組成を掘り起こせることを示しました。高スループット自動化との組み合わせにより、「提案しては試す」というサイクルを極限まで加速できる点が大きな強みです。今後、同様のアプローチが他の化学反応や材料開発にも広がれば、研究開発の進め方そのものが変わっていく可能性があります。


