米ラスベガスで開催中の世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」で、英国発のスタートアップ・Humanoid社が開発した人型ロボット「HMND 01 Alpha」が静かな注目を集めています。ドイツの大手自動車部品メーカー・Schaeffler(シェフラー)社のブースで披露されたのは、リングを掴むシンプルなデモ。しかし、その裏側には「うまくできなくても、自ら判断して諦めずにやり直す」という、次世代ロボットらしい“賢さ”が見て取れました。
CES 2026で披露された「HMND 01 Alpha」とは
英国Humanoid社が開発する人型ロボットの試作機
「HMND 01 Alpha」は、英国のロボットベンチャー・Humanoid社が開発を進めている人型ロボットのアルファ版(初期試作機)とみられるモデルです。人の体に近い形状を持つ“ヒューマノイド(人型ロボット)”は、製造現場や物流、介護やサービス業など、幅広い現場で人を支援する存在として期待が高まっています。
今回のCESでは、完成度の高さや派手な動きではなく、「失敗しながらも自分で工夫してタスクをこなそうとする賢さ」を感じさせるデモが来場者の興味を引きました。単なる産業用ロボットから、「状況を理解して行動を変える存在」への進化が垣間見える内容です。
Schaefflerブースでの共同展示という意味
「HMND 01 Alpha」は、会場内のSchaeffler社ブースで展示されていました。Schaefflerは自動車や産業機械向けのベアリング、駆動系部品などを手がける世界的大手で、近年はロボティクス分野にも力を入れています。そうした企業のブースで人型ロボットが紹介されたことは、「人型ロボットが将来の産業インフラの一部として期待されている」ことの表れともいえるでしょう。
大手メーカーの持つ精密部品・アクチュエーター(駆動機構)と、スタートアップが得意とするソフトウェアやAI制御技術の組み合わせは、人型ロボットの実用化を一気に加速させる可能性があります。
“諦めずにリトライ”するロボットの賢さ
リング掴みデモに込められた技術的なポイント
今回のデモで「HMND 01 Alpha」が取り組んでいたのは、リングを掴むという、一見すると単純なタスクです。しかし、人型ロボットにとって「対象物を見つけ、適切な位置・向きで手を伸ばし、十分な力とバランスで掴む」という動作は、センサー処理、姿勢制御、力加減の調整など多くの技術要素が絡み合う難しい課題です。
見学者からは、リングをうまく掴めない場面も確認されましたが、そこで止まらず、自ら判断して掴み直そうとする挙動が見られました。これは、あらかじめ決められた一連の動作を「やるだけ」のロボットとは異なり、「うまくいかなかったとき、どう動作を修正するか」というロジックが組み込まれていることを示しています。
自律的なエラー検知とリカバリー行動
「うまく掴めなければ自分で判断してリトライする」という説明からは、少なくとも次のような能力が備わっていると考えられます。
- センサー情報から「掴めていない」状態を判定するエラー検知
- タスク未達成時に、別の軌道や動きを試すための行動計画
- 同じ操作を単純に繰り返すのではなく、微妙に位置や角度を変える試行戦略
これらは、今後の人型ロボットに不可欠な「自律性」の基盤技術です。人と同じ環境で働くロボットには、予期せぬズレや失敗を自らリカバリーし、周囲の安全を確保しながらタスクを完了させる能力が求められます。
「応援したくなる」ロボット体験が生む新しい関係性
現地レポートでは、「諦めずに何度も挑戦する姿を見ていると、応援したくなってしまった」という感想も紹介されています。ロボットが完璧にタスクをこなす姿よりも、失敗し、試行錯誤しながら少しずつ成功に近づく様子に、人間は感情移入しやすくなります。
人型ロボットは、工場の奥でひたすら正確に動くだけの機械から、「一緒に働き、成長を見守る存在」へと変わりつつあります。こうした体験が広がれば、ロボット導入に対する心理的な抵抗感が薄れ、社会受容性の向上にもつながると期待されます。
人型ロボット実用化に向けた今後の焦点
産業・サービス現場での活用シナリオ
「HMND 01 Alpha」のような人型ロボットは、将来的に次のような場面での活躍が期待されています。
- 製造ラインでの組立・検査作業の一部を人と協働して担う
- 物流倉庫でのピッキングや仕分け作業を自律的に行う
- 高齢者施設や病院での荷物運搬や見守りなど、身体を使うサポート業務
- オフィスや店舗での案内、受付、軽作業の代替
こうした現場では、毎回同じ条件が保証されているわけではなく、環境の変化や予期せぬエラーへの対応力が問われます。その意味で、「失敗したら自分で判断してリトライする」能力は、実用化に直結する重要な要素といえます。
ハードウェアとAIの両輪で進む開発競争
人型ロボットの実現には、関節をなめらかに動かすモーターや減速機などのハードウェアと、周囲を理解して賢く振る舞うためのAI・ソフトウェアの両方が不可欠です。Schaefflerのような精密機械メーカーと、Humanoid社のようなAI・ロボティクス志向のスタートアップの組み合わせは、まさにその両輪を象徴するものといえるでしょう。
各国で人型ロボット開発の競争が激しくなる中、今回のような「小さな失敗と賢いリカバリー」を見せるデモは、技術レベルだけでなく、人とロボットの共生イメージを具体化するうえでも重要な意味を持ちます。
まとめ
CES 2026のSchaefflerブースで披露された英国Humanoid社の「HMND 01 Alpha」は、派手なパフォーマンスではなく、「リングをうまく掴めなくても、自ら判断して何度もリトライする」姿で来場者の心をつかみました。失敗を前提に、そこからどう行動を修正していくか——そのプロセスこそが、これからの人型ロボットに求められる賢さです。
今後、こうしたロボットが工場や倉庫、介護・サービスといった現場に入っていくにつれ、「完璧な機械」としてではなく、「ともに働き、ともに成長するパートナー」としてのロボット像が、より現実味を帯びていきそうです。



