中国の検索大手Baidu(バイドゥ)が検索体験のAIシフトを一段と強めている。同社の李彦宏(ロビン・リー)CEOは、Baidu Searchは「世界で最も積極的なAIトランスフォーメーション」を遂げつつあり、現在はトップ1の検索結果の約70%がリッチメディア形式で表示されていると述べた。従来のテキストとリンク中心の検索から、AIを中核とする新しい検索体験への再設計が進んでいる。
概要と発表内容
「世界で最も積極的なAI変革」の狙い
李CEOは、検索サービス全体をAI中心に作り替える方針を強調した。検索の起点から回答提示、関連情報の提示方法までを見直し、ユーザーが最短距離で知りたい内容に到達できる体験を志向している。
トップ結果の約7割をリッチメディア化
同社によると、現在トップ1の検索結果の約70%がリッチメディア形式で表示される。従来の青いリンクに依存せず、要点をまとめたカード型の表示や、画像・動画・グラフなどを組み合わせた見せ方により、検索結果ページ内で理解を完結できる場面が増えているという。
テキスト&リンク中心からAI中核の体験へ
検索は従来、情報源への導線を提示することが主目的だった。今回の方向性は、AIが文脈を理解して要点を圧縮・再構成し、必要に応じて関連情報を並置する「答え中心」の体験へと舵を切るものだ。これにより、調べ物の初動が高速化し、追加の探索や比較も同一画面で行いやすくなる。
利用者・企業への影響
ユーザー体験の利点と注意点
要点が圧縮されて提示されるため、調査の初期コストは下がる見込みだ。一方で、AI要約の品質や出典表示の透明性、更新頻度による情報の鮮度など、ユーザー側で留意すべき点もある。複雑な意思決定では、要約と一次情報の両方を確認する姿勢が引き続き重要になる。
企業・メディアの対応策
検索結果が「答え中心」に移行すると、従来のクリック獲得だけでなく、AIが参照・要約しやすい形で情報を提供する工夫が求められる。
- 構造化データやFAQの整備、図表・要点サマリーの明確化
- 信頼性と専門性を高めるための執筆体制・監修フローの強化
- ブランド名・製品名の一貫表記や最新情報の迅速な更新
広告・収益モデルへの含意
検索結果内で情報が完結する場面が増えると、クリックパターンや滞在時間の分布に変化が生じる可能性がある。広告は従来のテキストリンク中心から、カード内連動やリッチフォーマットとの親和性を高めた形へと進化する余地があるが、具体的な設計は引き続き注視が必要だ。
市場動向と比較・今後の見通し
中国市場の文脈
中国の検索市場は規模が大きく、同時に厳格なガバナンスやコンテンツ管理の要請もある。AIを組み込んだ検索体験の拡大には、ユーザー利便性とガイドライン順守の両立が求められる点が特徴だ。
国際的な潮流との整合
世界の主要プレイヤーでも、検索にAI要約や対話型インターフェースを組み込む動きが進む。Baiduの取り組みは、この潮流の中でアグレッシブに実装範囲を広げるアプローチと位置づけられる。実装の深さや指標の公開度、透明性の確保が今後の評価軸になるだろう。
今後の展望
同社はトップ結果の大半をリッチ化する段階に入りつつある。今後は、表示形式の最適化、要約品質と出典の明確化、分野別の精度向上、そして収益モデルの検証が焦点となる。ユーザーは利便性を享受しつつ一次情報へのアクセスを確保し、企業はAIに「拾われやすい」情報設計を進めることで、検索のAI時代に適応していきたい。




