OpenAIは最新のライブ配信で、2026年9月までに「自動化されたAI研究インターン」、2028年3月までに「真に自律したAI研究者」を目指す大胆なロードマップを公表した。安全戦略の5層モデルや、約30ギガワットの計算資源コミットメント(総所有コスト約1.4兆ドル)、非営利財団を中核とする新ガバナンス、医療・レジリエンス分野への250億ドル投資方針など、研究・事業・社会実装の全方位で大規模な計画を示している。同社は目標達成に失敗する可能性を認めつつ、その潜在的影響の大きさから透明性を重視すると強調した。
概要とタイムライン
2026年「AI研究インターン」目標
OpenAIは2026年9月までに、数十万GPU規模で稼働する「自動化されたAI研究インターン」を内部目標として設定。限定的な範囲で研究補助が可能な水準を狙い、実世界の研究パイプラインにAIを組み込むための足がかりと位置づける。
2028年「自律型AI研究者」構想
2028年3月には、より広範な課題設定・仮説立案・検証を自律的に行う「自動化されたAI研究者」に到達する計画を示した。OpenAIは「完全に失敗する可能性もある」と率直に述べつつ、社会的インパクトの大きさを踏まえ進捗を公開していくとしている。
科学へのインパクト見通し
同社は、2026年には小規模な新発見、2028年には大きなブレークスルーが現実味を帯びると展望。科学と、その成果を広く配分する制度こそが生活の質を押し上げる最重要の原動力だと位置づけ、AIを科学の加速装置にする方針を明確にした。
安全戦略と技術アプローチ
5層のセーフティフレームワーク
OpenAIは安全性を「価値整合性」「目標整合性」「信頼性」「敵対的頑健性」「システム安全」の5層で管理する戦略を提示。多層での制御により、モデルの能力向上と社会的受容を両立させる狙いだ。
- 価値整合性(Value alignment)
- 目標整合性(Goal alignment)
- 信頼性(Reliability)
- 敵対的頑健性(Adversarial robustness)
- システム安全(System safety)
「思考連鎖の忠実性」の可能性と限界
注力技術として、推論過程を外形的に検証しやすくする「Chain-of-thought faithfulness(思考連鎖の忠実性)」を挙げた。一方で、この手法は脆弱性があり、適切な境界設定と明確な抽象化が前提となる点も認めている。
プロダクト戦略と計算インフラ投資
プラットフォーム化と「AIクラウド」構想
プロダクト面では、APIやChatGPTアプリにとどまらず、外部の個人・企業が価値の大半を獲得できる「真のプラットフォーム」化を目指す。将来的には大規模事業を可能にするAIクラウドの提供を視野に入れる。
30ギガワットの計算資源コミットメント
同社は現在、約30GWの計算資源を確保する計画にコミットしており、長期の総所有コストは約1.4兆ドルに及ぶ見込み。さらに、週あたり1GWの新規キャパシティを生み出す「AIファクトリー」構想も掲げるが、これは将来のモデル性能・収益・技術/金融の革新に対する確信が前提となる。
投資判断の前提とリスク
OpenAIは、モデル能力と収益の成長見通しを踏まえ現行コミットメントに「十分な手応えがある」とする一方、さらなる拡張には不確実性が残ると指摘。技術の進化速度、資本調達、運用の信頼性確保など、複合的な条件が成否を分ける。
ガバナンス刷新と社会的投資
新組織体制:OpenAI FoundationとOpenAI Group
新体制は、非営利のOpenAI FoundationがPublic Benefit Corporation(PBC)のOpenAI Groupをガバナンスするシンプルな二層構造。財団はPBCの26%を初期保有し、業績に応じてワラントで持分を増やせる。PBC側はミッション達成に必要な資源を柔軟に呼び込める設計だ。
非営利による250億ドルのコミットメント
財団はまず、医療・疾患治療、そしてポストAGI社会への移行を支える「AIレジリエンス」に総額250億ドルを投じる計画を発表。AI安全の技術研究に加え、経済影響、サイバーセキュリティなど幅広い分野を含み、過去と異なり迅速な資本投入が可能になったという。
ミッションの継続性
非営利・PBCの双方で「汎用人工知能(AGI)の恩恵を人類全体に行き渡らせる」というコア・ミッションは不変。研究・製品・資本配置・ガバナンスを一体で動かすことで、社会への配分と安全性の両立を図る。
総括
まとめ
OpenAIは、研究ロードマップ、5層の安全戦略、30GW級の計算投資、新ガバナンス、250億ドルの社会投資を通じ、AGI時代の加速と秩序の両立を狙う。達成不確実性を認めながらも進捗を開示する姿勢は、社会的議論とエコシステム形成を促す。科学の加速が現実化すれば、医療から産業まで広範な分野で波及効果が見込まれる一方、安全・インフラ・経済の課題をどう乗り越えるかが今後の焦点となる。




